「お盆は8月13日から15日なのに、なぜお寺のお参りは8月の初めから始まるのですか?」
「初盆なので、できれば8月13日から15日の間に来ていただきたいのですが……。」
近年、このようなご質問やご希望をいただくことが増えてきました。
故人を亡くされて初めて迎えるお盆を大切にしたい。そのお気持ちは、僧侶としても本当によく分かります。
しかし実際には、多くのお寺では、お盆より少し早い時期から各家庭へのお盆参りを始めています。
なぜ、そのようになったのでしょうか。
【昔のお盆参りは、お盆の数日間に集中していました】
かつては、多くの寺院で8月13日から15日、または16日を中心に、僧侶が朝から晩まで檀家さんのお宅を回っていました。
当時は、お寺の檀家さんも近くに住んでいることが多く、一軒のお参りを終えれば、次のお宅まで歩いて数分ということも珍しくありませんでした。
そのため、短い期間でも多くのお宅をお参りすることができたのです。
【暮らしの変化とともに、お盆参りも変わりました】
しかし、時代とともに人々の暮らしは大きく変わりました。
お盆休みに帰省される方、旅行に出かける方、ご家族が集まれる日が限られている方も増えています。
また、お寺の檀家さんも、お寺の近くだけではなく、市外や府外へ移り住まれることが珍しくなくなりました。
以前なら一つの町を歩いて回れたお盆参りも、今では車で長い距離を移動しながら、一軒一軒お参りすることが多くなっています。
こうした暮らしや地域の変化に合わせて、お寺でも8月初旬頃からお盆参りを始めるようになりました。
現在では、7月盆、月遅れ盆、さらに旧暦盆まで視野に入れながら、ご家庭や地域の事情に合わせてお参りする寺院もあります。
つまり、お盆の日が変わったのではなく、人々の暮らしに合わせて、お参りの期間が広がってきたのです。
【初盆だからこそ、丁寧にご供養したい】
亡くなられて初めて迎えるお盆は、「初盆(はつぼん・にいぼん)」として、とても大切に営まれます。
「初盆だから、8月13日から15日の間に来てほしい。」
そう願われるご家族のお気持ちは、とても自然なことです。
実は、「初盆だからこそ、丁寧にお勤めしたい」と思っているのは、私たち僧侶も同じです。
通常のお盆参りよりも少し時間をかけ、ご家族とともに故人を偲び、心を込めて読経し、お盆の意味についてお話しすることもあります。
そのため、一軒のお勤めに必要な時間も長くなります。
一方で、8月13日から15日は、昔からお付き合いのある多くの檀家さんのお参りが集中する時期でもあります。
限られた三日間だけですべての初盆のお宅へ十分な時間をかけてお参りすることは、現実にはとても難しいのです。
だからこそ、お寺によっては初盆のお参りを少し早めにお願いしたり、ご家族と相談しながら日程を決めたりしています。
それは、「簡単に済ませるため」ではなく、初盆だからこそ、落ち着いて丁寧にご供養したいという思いからなのです。
【お盆の時期は地域によって異なります】
前回ご紹介したように、日本には、
・7月盆
・月遅れ盆
・旧暦盆
という三つのお盆があります。
東京などでは7月にお盆を迎える地域があり、全国の多くでは8月の月遅れ盆、沖縄や奄美地方では旧暦盆が受け継がれています。
日本全国を見れば、「お盆はこの日だけ」というものではありません。
それぞれの地域で、ご先祖さまをお迎えする時期が受け継がれてきたのです。
【大切なのは、ご先祖さまを想う時間です】
「仕事の都合で13日から15日にお参りできません。」
「家族全員が集まれるのは、お盆を少し過ぎた日になります。」
そのようなご相談も毎年たくさんいただきます。
私は、そのような時には、
「どうぞ、皆さんが集まれる日にお盆のお参りをさせていただきましょう。」
とお伝えしています。
ご先祖さまは、「日にちが一日違ったから帰ってしまう」という存在ではありません。
ご家族が集まり、故人を思い出し、「おかえりなさい」と手を合わせる時間こそ、お盆で最も大切なことではないでしょうか。
初盆も同じです。
日にちにこだわるあまり、慌ただしいお勤めになってしまうより、ご家族と僧侶が落ち着いて手を合わせ、故人を偲ぶ時間を持つことの方が、私は大切だと思っています。
僧侶も、一日に何十軒ものお宅を急いで回るためにお盆参りをしているのではありません。一軒一軒のご家庭とともに、ご先祖さまへ心を込めて手を合わせるためにお参りしています。
どうぞ、お盆の日程について心配なことがあれば、遠慮なくお寺や僧侶へご相談ください。
ご家族皆さんが安心してご先祖さまをお迎えできるよう、一緒に考えていきたいと思います。
合掌



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