「お祭り」と聞くと、皆さんは何を思い浮かべますか。
屋台、盆踊り、花火大会、神輿(みこし)…。
どれも夏の楽しみですが、日本人にとって「まつり」は、もともと賑やかな催しだけを意味するものではありませんでした。
大切な存在を迎え、ともに時を過ごし、感謝を込めて送り出す。
私は、これこそが「おまつり」の原点だったのではないかと思います。
七夕が終わる頃になると、全国各地で夏祭りが始まり、やがてお盆を迎えます。
一見すると別々の行事のようですが、日本の民俗学では、これらには共通して見られる「祈りの構造」があることが指摘されています。
それは、
「迎え、ともに過ごし、感謝して送り出す」
という、人と神様、ご先祖さまとの関わり方です。
私は長年、この日本のおまつりの形を見つめる中で、真言宗の修行で行われる「行法(ぎょうぼう)」と、どこか共通するものを感じてきました。
真言宗の僧侶は、修行の中で「行法」と呼ばれる修法を行います。
まず、道場を清らかに整え、仏さまをお迎えし、お供えを捧げます。
そして、仏さまと向き合い、そのお心に近づくことを願いながら瞑想し、修行を終えると、再び感謝を込めてお供えを捧げ、仏さまをお送りします。
私は、この流れを学んだとき、日本のお祭りやお盆にも通じるものを感じました。
大切な存在をお迎えし、ともに時を過ごし、感謝を込めてお送りする。
もちろん、日本のお祭りと真言密教の行法は、それぞれ異なる歴史や背景を持っています。
それでも私は、「お迎えし、おまつりし、お送りする」という祈りの形には、どこか共通する心が流れているように感じています。
【神様を迎える夏祭り】
例えば、京都の祇園祭や大阪の天神祭をはじめ、日本各地の夏祭りでは、神様をお迎えし、人々とともに過ごしていただき、最後にお送りするという流れを見ることができます。
神輿が町を巡り、船渡御や神幸祭が行われるのも、神様に地域へお出ましいただき、人々とともに時間を過ごしていただくという意味を持つ大切な儀礼です。
もちろん、それぞれのお祭りには異なる歴史や由来があり、「すべて同じ起源である」と言うことはできません。
しかし、日本の祭礼を広く見渡してみると、
神様を迎え、ともに過ごし、感謝を込めて送り出す。
そのような祈りの形が、古くから受け継がれてきたことが分かります。
【ご先祖さまを迎えるお盆】
お盆もまた、ご先祖さまをお迎えする行事です。
迎え火を焚き、お供えをし、家族が集まり、ご先祖さまとともにひとときを過ごし、最後は送り火によってお見送りします。
つまり、お盆もまた、
ご先祖さまをお迎えする「おまつり」
と言えるのではないでしょうか。
だからこそ、お盆は悲しみの日ではありません。
ご先祖さまへ、
「おかえりなさい。」
と声を掛けることのできる、喜びの日でもあるのです。
【花火にも祈りの心が込められている】
夏といえば花火を思い浮かべる方も多いでしょう。
花火大会にはさまざまな成り立ちがありますが、中には慰霊や鎮魂、神仏への奉納という意味を持つものもあります。
現在では娯楽として楽しまれることが多くなりましたが、その背景には、人々の祈りの心が受け継がれている例も少なくありません。
また、お盆の迎え火や送り火を住宅事情などで行うことが難しいご家庭も増えています。
私は、お盆のお迎え火・送り火を行う際に、線香花火などの手持ち花火を、お迎え火・送り火の一つの形として楽しみながら、ご先祖さまをお迎えするのも良いのではないでしょうかとご案内しています。
もちろん、これは昔から伝わる正式な作法ではありません。
しかし、ご家族が手持ち花火を囲みながら、ご先祖さまを偲び、
「おかえりなさい。」
「ありがとう。」
「また来年もお帰りください。」
そんな気持ちで心を寄せるひとときがあるならば、それも現代の暮らしに寄り添った、新しい祈りの形の一つになるのではないかと思います。
【日本の夏は「祈り」の季節】
七夕
地域のお祭り
お盆
夏の花火
一つひとつを見ると別々の行事のようですが、日本の夏には、
「迎え、ともに過ごし、感謝して送り出す」
という共通した祈りの流れが受け継がれてきました。
今年の夏は、ぜひ地元の神社やお宮さんのお祭りも楽しみながら、ご先祖さまをお迎えするお盆のひとときも大切にお過ごしください。
日本では古くから、神様を敬い、ご先祖さまを敬い、そのどちらも大切にしながら暮らしてきました。
行事の形は時代とともに変わっていくかもしれません。
しかし、大切な存在を迎え、ともに過ごし、感謝して送り出すという「おまつり」の心は、これからも受け継いでいきたい日本の文化ではないでしょうか。
今年のお盆には、ぜひご先祖さまへ、
「おかえりなさい。」
そんな気持ちで手を合わせてみてください。
合掌



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